さて、どうする?

二児の父が考えた子育て方針の備忘録。父親目線で育児について気づいた事を書いてます。

思春期に吉田戦車を読んだことで受けた影響について

吉田戦車氏(以下敬称略)という漫画家がいます。主に4コマ漫画、短編漫画の作家で、「伝染るんです」で有名です。もう20年以上前の作品ですが、カワウソ君は今でも現役かな?

 

↓手書きですみませんが、こういうキャラクターです。

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私は中学生頃からファンなのですが、私の人生というか考え方に結構な影響を与えています。最初に吉田戦車の漫画を読んだのは「伝染るんです」で、当時はいわゆる「シュール系」「不条理ギャグ」漫画の代表作のような扱いを受けていたと思います。確か「花金データランド」(←バブル期のランキング番組です。懐かしいな…)で「東大生が読んでいる漫画ベスト1」という称号を手にしていた記憶があります。
ちなみに当時の漫画事情ですが、ジャンプ黄金期の終盤頃だったかと思います。人気だったのは「SLUM DUNK」「幽遊白書」「ダイの大冒険」や、おなじみ「ドラゴンボール」等でした。「伝染るんです」を読んでいるというだけで性格のひねくれ具合がわかってしまいますね。

 

さて冒頭に「考え方に結構な影響を与えている」と書きましたが、一体なんでしょうか。

 

それは吉田戦車作品におけるギャグの展開方法です。ネタとしては「シュール系」の扱いを受けてましたが、実はとても論理的な展開方法が多いと個人的には認識しています。(なお、シュールとは三省堂さんによると「超現実的な、不条理な、奇抜な、難解な様子」のことだそうです。)

[三省堂辞書サイト]10分でわかる「シュール」 


吉田戦車のネタ作りは、現実にあるモノから法則を推論して正反対のモノや存在しないモノを生み出す、というパターンが多いです。〇〇があるなら△△もあって良いはずだ!という方法論を日常の細かい部分に適用して「ギャグ」という形で表現する、という事に面白さを感じるのです。

また普通の漫画では、生活感のあるリアルな汚い部分は見せず、表面上は綺麗に取り繕いがちですが、吉田戦車の場合は無駄に汚いリアルさをあえて見せる事でギャグを演出することが多いです。例えば男キャラには必ず汚めのヒゲ、スネ毛が生えてます。そこが隠し事のない清々しさを感じて好感が持てます。

 

そんな作品を思春期に読んだためなのか、私はテレビやインターネットなどで放送、掲載される意見に対して「他の状況だったらどうだろう?」「別の立場からはどう見えるだろう?」などと複数の視点で考えるようになり、また、耳触りの良い言葉ではなくリアルな本質を求める様になったのも、思春期に吉田戦車作品を見た影響が少なからずあったのでは無いかと考えています。(そんなに大げさなレベルの話ではありませんが)

 

さて、具体的には何が論理的でリアルなのか?分からないと思うので、ちょっと例を挙げてみました。キャプチャを貼り付けたいところですが、ここは説明文だけでガマンです。

 

・ひな人間(「感染るんです」より)

父「ひな人形じゃつまらんだろうと思ってひな人間を買ってきたよ。」

娘「ひな人間!!」

ひな人形ならぬひな人間。「人〜間〜」と言いながら人の家でソーセージをオカズに飯を食い、ガムを噛みながら女性セブンをよむ。つまり子供のためを思って買ってきたものが、ただ迷惑な大人2名を連れてきただけ、という話。人形じゃなくて人間だったら嫌だよね、というネタですが、ソーセージで飯を食うとか女性セブンを読む辺りでリアルさを出す事で、ひな人間の「嫌さ」を演出しています。当然のようにお内裏さまには小汚いヒゲが生えてます。

 

・半地下鉄(「ぷりぷり県」より)

通称ハンチカ。車両が半分だけ地表に出ている地下鉄。一般の車が走る路面に、電車が半分むき出しの状態であるため、通行の妨げになっている。

主人公ツトムの出身県であるぷりぷり県を走る半地下鉄。地上に電車、地下に地下鉄なら、半分だけ地面に埋まった「半地下鉄」があってもよいはずだ!という帰納的思考(と言ってよいのか?)から生まれた、吉田戦車の基本とも言える発想。「ぷりぷり県」にはこの発想から成るネタが豊富です。本領発揮とも言える本書は、氏の最高傑作と評価する人も多いです。

 

ちなみに、300年後の24世紀にはぷりぷり新幹線「めまい」が開業予定だそうです。なんと、地下で東京、京阪神と繋げるという壮大な計画。ぷりぷり県がどこにあるかは不明ですが、そりゃ24世紀までかかるよね…めまいもするわ…

なお、線路に金がかかり過ぎるためなのか、車幅が通常の1/4しかなくシートは縦1列のみ。県民には期待されているが、多分採算は取れないと思われます。

 

 ・紫信号(「ぷりぷり県」より)

赤から青に変わる直前のうれしくてたまらぬ一瞬に笑う余裕すらないのか…東京砂漠!

ぷりぷり県では赤(止まれ)→紫(笑え)→青(進め)を意味する紫信号。青信号に変わる嬉しさを「紫信号」で表しているようです。これも半地下鉄と同様の発想です。

…青信号ってそんなに嬉しいか?

 

ファミコンづうしん(「はまり道」より)

「ああ、恥かしい。私は「ファミコン通信」のことを水ぼうそう、でっち奉公、米どころのように濁点をつけて「ファミコンづうしん」と読むとばかり思っていたのです!」

「…そりゃ恥かしいね」

いわゆる日本語の「連濁」を無理やり適用した例ですが、類似例がなんで「水ぼうそう」「丁稚奉公」「米どころ」やねん!というのがいかにも吉田戦車らしさ。

ちなみに「はまり道」はファミコン通信(現ファミ通)という雑誌に連載されていた四コマ漫画です。元ゲーマーの私としては、ゲームを題材にしたこの作品が一番好きですね。ウィザードリィの忍者が素っ裸でちんこ出していたのがリアルで特に好きでした。(注: RPGウィザードリィ」の職業の一つである「忍者」は装備品を一切身につけない方が強い、という特徴からのネタ。リアルにそのまま描くのは吉田戦車くらいでは?)

その他、マリオが裸に白衣を着ているド変態だったり、カービィが剣で敵を惨殺しまくるキチ〇イキャラだったり、「ゼルダの伝説」のリンクさんの苗字が「リンクさ」で名前が「ん」だったり、基本的に任天堂キャラがヒドイ扱いを受けている稀有なゲーム漫画です。

 

 

…うん、吉田戦車の面白さを言葉で説明するのは私には無理だ( ;∀;) 興味ある人は単行本買って読んで下さい。一冊だけ読むと??で終わる可能性があるので、出来れば複数冊を読んで見て下さい。合う人はハマると思います。

インターネットでよく見る「中の人」という言葉の元ネタである「下の人などいない!」もこの作品に掲載されています。

 

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)

伝染(うつ)るんです。 (1) (小学館文庫)

 

 

あ、あと余談ですが、LINEの伝染るんですスタンプがあまりにもマニアック過ぎて使えません…カワウソ君、カッパ君、斎藤さん、しいたけ、みたいなメジャーなキャラだけ出せば良いのに、半分くらいが名も無いおっさん、じいさん、中学生の絵柄なので知らない人が見ても意味がわからないです。小学館には改善希望です。

 

だいぶとっ散らかったエントリーになってしまいました。吉田戦車についてはまだいくらでも書けますが、長くなったのでここまで。